滋賀県発、飲食を通じてすべての人に喜びを提供し続ける個性派集団
滋賀県内で複数の飲食店を通じた街づくりを展開する株式会社nadeshico様(以下、nadeshico)。
「新しい食文化を創造し、世界を変える」を経営理念に、日々創意工夫を重ねて新しい飲食のカタチを創り出し、街に新しい活気を与え、そして愛されるお店づくりを目指しています。近江商人の三方よしの精神と日本のおもてなしの心を大切にし続けた結果、多くの方からの支持をいただき、2017年には東京へも進出。
代表取締役の細川雄也様は、「居酒屋から日本を元気にする」想いに賛同する全国1,770店舗が加盟するNPO法人居酒屋甲子園の第6代理事長としても精力的な活動をされていらっしゃいます。
着実に経営理念の実現に向けて歩まれているnadeshico。しかし、その道程は決して平坦ではありませんでした。創業の経緯から当時の悩み、そして解決の糸口となった大久保秀夫塾での学びなどを振り返ります。
6年間の農協勤務で得た経験を胸に、経営者になりたい想いの実現へ
フォーバル 西野 幸典(以下西野):創業に至ったきっかけについてお聞かせください。
nadeshico 細川 雄也社長(以下細川社長):私は学生時代から「経営者になって成功したい!」と思っていたのです。
しかし、そんなに簡単なことではないことも分かってましたし、親の勧めもあって大学卒業後は地元の農協に就職しました。農業に関する知識はそれなりに得ることができましたが、一方で独立への気持ちも年々高まっていき、30歳を前に行動に移そうと決意。28歳の時に6年間お世話になった農協を退職しました。
独立するにあたり、農業の知識をどう活かすかを考え続け、結果、私のなかで大きな可能性を感じた飲食業界にたどり着きます。また農協時代に、農家さんの農作物への想いを肌で体感しており一方でその想いがなかなか消費者に届くきっかけが少ない実情も知っていました。
そこで、直接野菜を仕入れて、飲食店として販売していけたら、農家さんも私たちもお互いがHappyになるのではないかと思ったのです。
株式会社nadeshico 代表取締役
細川 雄也様
西野:確かに、農業と飲食では「食」というくくりでは共通しておりますよね。細川社長にとりまして、飲食への可能性を感じられた最大の要因はなんだったのでしょうか?
細川社長:「より儲けることができそう」と感じたからですね(苦笑)。後にこの考えは間違っていたことに気付くわけですが。
西野:きっかけであればそれでも良いのではないかと思います。自分たちが儲からなければ、農家さんからも多くの野菜を仕入れることはできないのですから。
何かが足りない日々…尊敬する先輩からの一言で入塾を決断
細川社長:創業前・創業後もいろいろな壁にぶつかりましたが周囲の方々の協力もあって、1つ1つクリアしていくことができました。
しかし、経営者として腑に落ちなかったことがありました。それは「商売って何だろう?」「飲食って何だろう?」…という疑問に対する答え。分かりそうで分からなく、、私のなかでずっともやもやしていたのです。
そのときに、私が所属している居酒屋甲子園の当時の理事長から大久保秀夫塾のことを聞きました。「自分も大久保秀夫塾に通って人生観が変わった。だから細川ちゃんも行きなよ」って。
私は尊敬する方からの誘いにはNOとは言えないので迷わず応募したのです。
西野:即決だったのですね。いくら尊敬している方からの勧めとはいえ、当時全10回に渡り実施される経営塾への参加は細川社長にとりまして大きな決断だったのではないかと思います。
株式会社フォーバル コンサルティングディビジョン
ディビジョンヘッド 西野 幸典
「在り方」「三方良し」…衝撃的な言葉の数々、そして迷いがなくなった
西野:即決で入塾され、実際にいかがだったでしょうか?
細川社長:一言で衝撃的でした。
私は上場企業のトップの話を今まで聞いたことがありませんでした。どういう思考なのかと考えたときに、「利益ありき」の話をされるのかなと思っていたのです。
しかし、実際は全く逆の話をされました。「在り方」が大切、そして三方良しであること。経済性=利益ありきではなく、社会性=社会の役に立つために会社があるんだと。
今でも忘れられない言葉があります。「戦前は“商い”って言われてて、自分だけが儲けようとしたら、隣の商店に“そんなことをしたら村八分になる”と言われると」戦後、アメリカが入ってきたことで変化した話を聞いた時に、私のなかでもやもやしていた疑問が解消されました。ストンと落ちた感じです。
正しいことを誰かのために、世の中のためになるということを一生懸命にやっていれば、必ず経営っていうのは良くなってくるんだと。今でも大きな軸になっています。
西野:素晴らしいですね。何故?何のためにやるのか?御社の存在理由も明確になってきて、そこで、改めて理念とかビジョンを作られたのですね。
細川社長:そうですね。いただいた言葉の数々が今の理念・ビジョンの節々にも込められております。
理念・ビジョンに向かって、皆で語り合う
西野:大久保秀夫塾を卒業されて2年経ちます。理念・ビジョンの浸透については以前から課題としてお持ちだと伺っていましたが、その後の状況はいかがでしょうか?
細川社長:弊社には「新しい食文化を創造し、世界を変える」という企業理念があります。これは大久保秀夫塾の時に改めて作ったものなのですが、毎朝、朝礼でみんな唱和しています。
企業理念、目的・行動基準は皆で話しているので、それなりに浸透しているかなとは思いますが、浸透という意味で一番大きいのが毎月一度行う研修会の時ですね。
耳にタコができるくらい、何のためにやっているのだということを、「とにかく新しい食文化を滋賀県に作っていくんだ。その結果、滋賀県の人たちが、この街にこのお店ができて、滋賀県変わったね」と言われるのが、私たちの成すべきことなんだと。滋賀県が変わったら、次は日本を変えようって。だから今滋賀県を元気にするために、新しい食文化を飲食通じてどんどん発信していこうと言っていますね。とにかく熱く語り合っています。
理念・ビジョンに向けて
各スタッフの方向性は一致している
東京進出・売上拡大…理念・ビジョンに共感・共鳴してくれる仲間のおかげ
西野:理念・ビジョンを実現させるべく、東京にも進出されましたね。
細川社長:大久保秀夫塾で経営の在り方を学び、その後3ヵ年事業計画を作ったのですが、そこに書かれていた「東京進出」含めて計画通りに事が進んでいます。
不思議だなあと思うのが、世の中のためにやっていると、応援してくれる人が現れるということ。東京進出については、私たちだけでやろうと思うとハードルが高かったのですが、「滋賀を発信する飲食・居酒屋を作りたいんだ、滋賀に貢献したいんだ」っていう、この在り方が素晴らしいと仰ってくれた方たちが自然と集まってくれて、トントン拍子で出店することができたのです。
大久保塾長が以前、在り方経営を一生懸命にやっていれば、「共感・共鳴」してくれる仲間が集まってきて、協力してくれる話をされていたのですが、身を持って体感しました。東京進出できたのも、大久保塾長、そしてフォーバルからの学びのおかげだと心から思っています。
西野:ありがとうございます。売上や利益等も入塾前と比べると変化はありましたか?
細川社長:増収増益です。入塾中は年商3億でした。大久保塾を卒業して2期過ぎましたが昨年は4億2千万くらい、今年も4億8千万くらいですので入塾前と比較して約150%増ですかね。
理念・ビジョンへの共感・共鳴なくして
東京進出はなかったと振り返る
学生の目が変わる瞬間…私たちは飲食業ではない、街づくりをしている
西野:飲食業で「採用」に苦しんでいるという声を非常に多く聞くのですが、御社のなかで工夫されていることはありますか?
細川社長:「全員人事部、全員が人事担当」の意識を持って行動に移しています。 例えばアルバイトを探している知り合いがいたら声掛けを、アルバイトから社員へ…等。口を開けて待っているだけではなかなか応募は来ませんから。
西野:全員人事部、全員が人事担当は面白い取り組みですね。細川社長が期待されている成果は出ているのでしょうか?
細川社長:はい、それなりに成果は出ていますね。
あと驚かれるのですが、昔働いていた社員にもう一度声をかけたら2名が戻ってきてくれたのです。nadeshicoでの考え方・働き方が良かったと言ってくれました。
また、今年になって大卒の新卒採用をはじめました。多くの学生が、弊社が飲食業という印象で説明会に来られると思うのですが、「私たちは飲食業をやっているのではない。いつも街づくりをやっている。街に新しい飲食のカタチを創り出して、街に新しい活気を生み出して、滋賀の食材を使って生産者に貢献する。三方良しの精神、これが商売だ。」という話をします。
すると学生の顔つきが変わるんですよね。
西野:まさに社会性ですね。
細川社長:熱い想いで社会性の話をすると、学生は「ああ、滋賀県にこれだけ貢献しようって真剣に考えている会社なんだ」という印象を持ってくれます。
この時期の新卒採用は非常に大変で、説明会もなかなか人が集まらないんですけど、そんななかでもnadeshicoで働いてみたいって思ってくれている人は増えているのではないかなって思うのかなと。
西野:細川社長が作られた会社の経営理念・会社への想いを、学生に魂を込めて伝え続けていることが、採用においてプラスに働いているように感じますね。
逆にそこへの理解がなければ、雇ってもミスマッチになる可能性が高い。細川社長が滋賀県への想いを伝えることは大切だと思います
全員が人事部・人事担当
nadeshicoのチームワークの高さを表している
「居酒屋から日本を元気にする」居酒屋甲子園への想い
西野:細川社長は現在居酒屋甲子園の6代目を務められていらっしゃいます。紹介できることがあれば、ぜひお聞かせください。
細川社長:居酒屋甲子園でも「在り方」につながります。利益だけではない、全てはお客様のためにやるのだということを追求していっているのが居酒屋甲子園です。
加盟数は昨年1,679店舗だったのですが、今年は1,770店舗まで増えました。居酒屋甲子園の在り方へ共感・共鳴してくれる居酒屋が来てくれますので、非常に活気のある団体です。
今回、私は「求心力」というテーマを掲げました。飲食業は今後ますます機械化が進むでしょうし、既にそうなっているところもあります。人材不足も重なり、飲食業界にとっては逆風なことが多いのですが、大切なのは、自分が渦の中心となって、周りをひきつけさせること。それをやらなければいけないと思うのです。/
先ほどの東京進出等の話でありましたが、世の中のため、誰かのためって、大久保秀夫塾で教えてもらい、それを実践し続けることで、外に逃げていたことが内に入ってくるようになりました。まるで台風の渦のように。お客様も、売上も、人材もそうです。在り方を大切にするからこそ人は集まってくるし、そういう会社・飲食業でなくてはいけないなと思います。
今、居酒屋業界の大きな問題は、人が外に出ていってしまうことです。それをもう1回中に、入れさせなくてはいけない。そういった時に現場にいる自分たちが、キラキラ元気に働かないと、居酒屋で働くことが素晴らしいんだという思いで、働いてキラキラすることによって飲食っておもしろいなって、働いてくれる人が増えるんではないかなと。そんな活動をしています。
全国大会のプレゼンテーションが2017年11月14日にあるので何かそのカタチを作れればなって思っていますね。
前回の居酒屋甲子園の集合写真
nadeshicoも出場経験を持つ
※画像は居酒屋甲子園facebookより
居酒屋甲子園、超サイコウ!ぜひ見に来てほしい
西野:私も居酒屋甲子園に参加させていただきましたが、あれは言葉にできないものすごい熱気ですよね。
てっきり正社員のみでやられているのかなと思っていたら、学生のアルバイトもいてプレゼンまでしているという話を聞いた時には本当に驚きました。
細川社長:仰る通りです。なかなか辞めませんよね。
そもそも人材不足は何故なってしまうのかというと、人が辞めてしまうからです。辞めてしまうから集めないといけないということになる。だから、とにかく辞めさせないということが、ダムの水を止めるということが、まず大切なのではないかなと
もちろん、一人一人がそこで働く意味や価値を飲食の中で見つけてもらうでなくてはなりませんし、それを後押しする取組・活動は居酒屋甲子園でもやっていかなくてはならないなと思います。
ひとつ宣伝させていただけるのであれば、居酒屋甲子園は超サイコウです。ぜひ見にきていただきたいですね。
居酒屋業界の経営者に対して、在り方経営を広めていきたい
西野:今後フォーバル・大久保秀夫・経営塾…私たちに期待することは何でしょうか?
細川社長:居酒屋業界の人たちに、この経営の在り方とやりかたを知ってもらいたという気持ちがありますね。
私も当初はそうでしたが、多くの経営者が経済性から入っていくので。社会性から入れない。そこまで掘り下げられていないんですよね。私も在り方経営の必要性と大切さを広めていきたいと思いますが、フォーバルの経営塾をもう1度やっていただきたいです。
西野:開催については、多くの方からご要望が上がっており、実現に向けた協議を行っております。もし実現することになりましたら、細川社長のなかで経営幹部にさせたい社員や、居酒屋甲子園へ加盟されてる会社を紹介いただければと思います。
細川社長:ぜひ、よろしくお願いします。私たちは大久保秀夫塾で学んだことを胸に、これからもぜひ滋賀を、そして日本・世界を元気にするために、理念・ビジョンに向かってまい進していきます。
西野:今後ますますの活躍を楽しみにしております。本日はどうもありがとうございました。
フォーバル応接室にて
編集後記
細川社長は滋賀県を、そして飲食業が本当に大好きなんだなと強く感じました。その想いは確実に多くの仲間にも届いています。創業10年で、滋賀県の飲食店といえばnadeshicoと呼ばれてもおかしくない成果を上げられました。その根底には理念への熱き想いが常にあったからだと思います。
自分たちのことだけでなく居酒屋甲子園6代目理事長として日本の飲食業を特に居酒屋業界の未来を真剣に考えられている細川社長。これからの10年でどのような創造を世の中に発信してくれるのか?非常に楽しみです。渋谷にオープンしたお店に、ぜひお邪魔したいと思います。
(2017年5月取材時)