働き方改革でまず取り組む内容

続けて、同法にある複数の施策の中で、取り組むとしたらどれから取り組むかを問う質問についてである。この質問では、各施策の間での関心度や取組みやすさなどについて聞くためのものであったが、結果は、選択肢により大きく差が出るものとなった。

まずトップだったのが「有給休暇取得の促進」の255社(1034社中・24.7%)。続けて「労働時間の適正把握」の240 社(同・23.2%)。さらに「時間外労働の是正」の168 社(同・16.2%)が並んでいる。

また、「どれにも取り組むつもりはない」を除いた上位3つについて、その理由について聞くと以下のような回答が多かった。

これらは言葉の理解がしやすく、またこれまで取り組んでいたという企業も多いと思われる。取り組む対象として選択しやすかったのだと考えられる。

一方で、スコアが軒並み低かったのが新たな施策として注目されているものである。

最も低かったのが「同一労働同一賃金」の18 社(同・1.7%)、続いて「勤務間インターバルの促進」の25 社(同・2.4%)、「高度プロフェッショナル制度の新設」の26 社(同・2.5%)などである。どれも今回の立法化において注目された施策だが、スコアは低い結果となった。

さらに、そのスコアの高さから懸念されるのが「どれにも取り組むつもりはない」の234社(同・22.6%)という結果である。

すでに対策済みの場合もあるだろうが、2割以上の企業がこれら施策に取り組む意思を持たない状況は改善していく必要があるだろう。

続けて、関連する質問として、同法の中で取組みが困難なものを聞いている。

回答としては「取り組みが困難なものはない」が302 社でトップであったが、続く回答は「高度プロフェッショナル制度の新設」の237社、「同一労働同一賃金の制度化」の213社、フレックスタイム制の清算期間の見直しの181社であった。

ここでも新しい取り組みのほうが「取り組みが困難」だと思われている傾向が強い。

「取り組みが困難なものはない」を除き、上位3位に入ったものについて、その理由を聞くと、主に以下のようなものが挙がっていた。

はたして、このスコアの差は認知度によるものなのだろうか。

これについては、日本・東京商工会議所「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」の結果をもう一度見てみたい。

以下のグラフは働き方改革関連法の複数の施策のうち、5つについてその認知度を比べたものである。

そのうち、フォーバル調査でトップだった「有給休暇取得の促進」は「年次有給休暇の取得義務化」に該当するだろう。また「同一労働同一賃金の制度化」については「同一労働同一賃金」と一致する。

この2つのスコアをみたとき、下記グラフにおいても「有給休暇」の認知度のほうが「同一労働同一賃金」よりも高い結果となっている。

その認知度は75.4%と51.5%、23.9 ポイントの差があるものの、認知度が低いことが予想された「同一労働同一賃金」も半数以上の人が「名称・内容ともに知っている」という結果となっていた。

同じく、「高度プロフェッショナル制度の創設」についても、相対的には低いものの、その認知度は34.1%であった。

新しい取り組みについては、選択肢の中では認知度が相対的に低くても、認知している人は一定数いることがわかる。

ここから考えられることは、フォーバル調査において「取り組むとしたらどれから取り組むか」という質問に対し、これら新しい取組みを選択しなかった理由に、「認知度」よりも「取り組みにくさ」を感じている可能性があることである。

ブルーレポートの発行者

株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム

フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。