コラム:オープンデータへの取り組み

2016 年12 月に成立した「官民データ活用推進基本法」は、「官民データの適正かつ効果的な活用の推進」により「国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与」することを目的とする法律です。

端的にいえば、日本社会の発展や国際競争力を確保するためにデータ活用を進めていくべき、という内容です。

国や自治体が持つデータを積極的に民間に公開するとともに、企業もデータを共用するなどオープンデータ化を進め、活性化させていこうとするものです。

国はまず、持ち得るすべてのデータをオープンにすると共に、その活用の可能性を拡げるために、データの一元化を目指して、e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)という政府統計ポータルサイトを公開しました。

統計で見る日本

総務省統計局の情報はもちろん、今では政府のあらゆる情報をこのサイトで一元管理することが目指されています。

2017 年3 月、ドイツ情報通信見本市にて提唱された「Connected Industries」(コネクティッド・インダストリーズ:人や機械、データ、企業同士など、さまざまな主体がつながることにより、新しい価値を生み出す)の概念を元に、社会のあらゆるデータを繋げ、新たな社会価値を創出しようという流れの中で、まずは誰もが使えるデータ量を増やす、データを繋げるための多様なデータを公開する、という大きな波がきていました。

これらデータ活用のビッグウェーブにおいては、取り組みスピードの加速度的な上昇や、国産イノベーションの創出まで見据え、官民一体での取り組みが基本に据えられています。

そんな中で、産学官が参画・連携し、IoT 推進に関する技術の開発・実証や新たなビジネスモデルの創出を推進するための体制を構築することを目的とした「IoT 推進コンソーシアム」が設立されました。また「データ流通」や「スマートシティにつながるデータプラットフォームの整備」への推進のための一般社団法人が設立されるなど民間主体での活動も目立ってきました。

さらに、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2018年6月15日閣議決定)及び「デジタル・ガバメント実行計画」(2018年7月20日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)に基づき、各省庁が、行政手続等・行政保有データの棚卸しを行うなど、大胆な取り組みが進められています。

また、e-Stat の機能が拡張したjSTAT MAP は、地域のあらゆる情報を組み合わせ、地図上でワンクリックかつ視覚的に分析結果を表示する機能を備えています。https://www.e-stat.go.jp/help/view-on/map/about_gi

東京都または神奈川県で人口総数が250,000以上の市区町村を抽出して表示した図

統計地図を作成する他に、利用者のニーズに沿った地域分析が可能となるような、さまざまな機能を提供しています。市場分析など、経営に関する詳細な計画立案に資する基本的な分析が簡単にできるツールがWEB 上で無料提供されています。

また、e-StatやjSTAT MAP の機能を集約した上でより多方面のデータを掛け合わせ『可視化』にこだわったRESAS(リーサス:Regional Economy(and) Society Analyzing System)というシステムも、我々はWEB 上で自由に使うことができま
す(https://resas.go.jp/)。

地域経済分析システム

RESAS は地域経済分析システムと呼ばれています。内閣府のまち・ひと・しごと創生本部が、地方創生目的で運用している、産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約し、可視化を試みるシステムです。

RESAS内コンテンツ「観光マップ」にて、宿泊者数のボリュームをマップグラフ化
RESAS内コンテンツ「企業活動マップ」にて、中小・小規模企業の営業利益率をマップグラフ化

ここ数年の間で、データの「公開」「流通」「共有」「活用」に係る政府の動きは活発化し、より具体的な施策が取り組まれ、多くのアウトプットが出てきています。それに対しては中小企業経営者も、しっかりとキャッチアップをしていく必要があると感じています。

そしてもちろん、それら「データ」のあらゆる取り扱いは、安全で安心できるセキュリティ環境があってこそです。2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて、安倍首相は「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータで回っている」と強調しました。

また、医療や産業、交通などのデータの自由な流通が経済成長や貧富の格差の解消につながると訴えたうえで、個人情報や知的財産、安全保障上の機密を含むデータは「慎重な保護のもとに置かれるべきだ」と指摘をしています。消費者や企業活動が生みだす膨大なデータについて「自由に国境をまたげるような」流通のルールをつくるために、世界貿易機関(WTO)加盟国による交渉の枠組みを提案しました。

「信頼ある自由なデータ流通こそが、持続可能な社会の創造につながる」という体制が、世界規模で整えられつつあります。国内では、まずは日本を根底から支える中小企業が理解しやすく、積極的に取り組んでいくことができる環境づくりが必要でしょう。

ブルーレポートの発行者

株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム

フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。

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